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2006年8月30日 (水)

鶴の機織

Slk「鶴の恩返し」の中で、鶴は自分の本当の姿を隠すため人目を忍んで真夜中に機を織った。これが転じて「鶴の機織」とは、隠れるように夜中に黙々と作業することを指す、いくぶんネガティヴな響きを伴う表現のようだ。

私の製作スタイルについては、この言葉がよく当たっている。私のケーブルは、夜作られる。語弊があるが、女子供の寝静まった頃が始動時刻だ。

和紙・絹被覆の工程には、多くの手間暇がかかる。気分のノリや勢いも必要だ。日中は本業もあるので、作業はどうしても夜中になってしまう。

一方、家族の奇異なる視線に晒されることも少なくない。自作オーディオ派の方なら必ず経験があると思うが、ケーブルにせよ電子基板にせよSPキャビネットにせよ、集中して作業するには排他的にならざるを得ない場面がある。

芯線のアニールにはアルコールランプの火を使うので、厚手の革手袋を着用し、火傷や火事にならないように神経を使う。また和紙の裁断にはナイフの刃先を鋭利に研ぐ。絹糸の巻きや組みの工程はなおさらだ。自然と、夜がしっくりくる。

全体のケーブル製作プロセスを登山に例えれば、端子のハンダ付けは山頂目前だ。絹被覆の工程がそこまで延々と続くと考えていいだろう。

もちろん、ここまで手間をかけずとも、優秀とされる切り売りケーブルに高価な端子をアセンブルするほうが遥かに楽だし、下手な自作に勝ることが多いと思う。しかし、市場に無い和紙・絹被覆は自らの手で作るしかない。

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